IDTは国際リニアコライダー国際推進チームの略称で、2020年に国際将来加速器委員会(ICFA)が創設したチーム。3つのWG(ワーキンググループ)を包括しています。
中田達也名誉教授(スイス連邦工科大ローザンヌ校)はそのIDTを総括する議長です。

令和4年10月14日の岩手日報がその前日に国会内で開催されたILC国会議連の総会の際に中田議長が講演した内容を報道しています。
そのうち中田議長の発言👇
💡ILCを巡っては、政府間合意に一定のめどがついていることが必要とする日本と、誘致に前向きな意思表示が泣ければ議論が始まらないと考える海外政府との間で、かみ合わない状態が続いていると指摘。理解の不一致を解決しない限りは議論が進まない。
💡ILC計画をけん引するIDTがつなぎ役となって、来春(令和5年春)までに各国間でグローバルプロジェクトの理解の共有を図れるようにしたい

【CERNの現在の状況】
💠ヒッグス粒子が発見された2013年頃は、次期の大型加速器を活用した欧州の方向性が定まっておらず、ILCに関してもチャンスはあった。今はFCC−ee計画が浮上し、他の不確定な計画には参加できるような状態になっていない。
💠CERNはFCC−ee計画に関係することで時間が割かれている。加えて戦争という状況が大きく影響しており、不確定なILC計画よりも確実な方向性に議論を寄せつつある。
💠CERNは70年の歴史があり、現在も活気がある。国際研究所が出来ればすぐにそうにはなるとは限らない。ジュネーブが国際都市であることも留意すべきである。
【日本の誤認と国際交渉の不慣れ】
💥プレラボは、合意に至るまでを含む準備期間であって、その間に合意に至らない可能性も十分にある。関係国が協働でより研究を進めることで政府間の理解が深まる。その上でプレラボとは契機として研究者はとらえていたが、日本政府はプレラボを認めたら、日本は後戻りできないという方向で捉えられてしまった。
💥日本政府が手を挙げればすぐ実現するという誤解があるのではないか。関係国との厳しい交渉が必要。実現するためには明確な旗振り役の存在が不可欠
【海外の研究所における運営費の確保状況】
🚩欧州と日本では税制が異なるが、ハンブルグ市はDESYを大事にして市からも相当額を拠出しているし、中国も地方政府に拠出を要求している。
と3年前の新聞記事の状況から前へ動いていないことがこの発言でほぼ理解できます。さらに、日本はグローバルな観点で学術的にILCは必要だということを主張すべきであるとし、科学におけるこれからの計画は科学者だけでは話がつかないとも強調されました。
CERN周辺では日本政府がここ3年の間ILCについては放置をしていたため、もうすでに自前でできることにシフトしていることが窺える内容でした。これが現実と認識しなければならない厳しい状況と受け止めた面会でした。