【日本経済新聞電子版 2024年12月5日 18:17 】
厚生労働省は医師偏在の解消に向けた財源として保険料を使う方針を固めた。早ければ2026年度から年100億円程度を用いて、地方で働く医師の給与を引き上げる。都市部や特定の診療科に集中している現状を改める。
地方で働く医師を増やすために支援金を新たに設ける。人口と比べて十分な医師がおらず、特別な支援が必要な区域を、厚労省の意見を参考にしながらそれぞれの都道府県が決める。この区域内にある医療機関を対象に支援金を支払う。同省の試算では、現在対象区域で働く医師の数は全国の約10%に相当する。
支援金の使い道は主として人件費に限る。勤務手当の増額、休日に代理出勤する医師の確保などに使う。対象地域に医師を派遣する区域外の中核病院も支援の対象に含める。支援金と同じ規模の給付抑制に取り組み、実質的に国民の保険料は増えないようにする。
健康保険組合連合会や全国健康保険協会(協会けんぽ)など、被用者保険の関係団体と年内の合意をめざす。それぞれの団体は保険料を医療提供体制の整備に充てるのは、目的外だと反対していた。厚労省は使い道を人件費に限定して、保険料の負担が増えないようにすることで、健保側の承諾を得る。
地方で働く医師の待遇を改める一方で、公定価格である診療報酬の仕組みは全国一律を維持する。診療報酬に地域差をつける案には日本医師会が反対している。
厚労省は6日の有識者検討会で、医師偏在対策のとりまとめ案を示す。この中に保険料の活用を盛り込む。他には美容医療への医師流出対策として、保険医療機関の管理者となるのに要件を設ける案などを用意する。
6日のとりまとめ案には、開業医が過度に多い地域での新規開業希望者に対し、都道府県が一定の要件を課すことができる案も盛り込む。開業希望者に対し、在宅医療や救急対応など、地域に足りない機能を担うよう要請し、従わない場合には勧告や公表などの措置をとれるようにする。
医師の地域偏在を解消するために厚労省が思い切った手を下す見込みとの記事。国民の保険加入者から徴収した保険料を財源に新たに支援金制度をつくり地方の医師へ人件費を上乗せするという考えだ。
しかし、記事内でも指摘をされているが、診療報酬に地域差をつけること、特に都市部の医師の手取りを抑制することは日本医師会からの反発が強そうだ。
また、開業医が過度に多い地域での新規開業希望者に対し、都道府県が一定の要件を課すことが出来る案も盛り込むとされているが、果たしてどこまで規制が行政にできるものか不透明な部分も多いと感じる。すでにドイツでは医師会が自ら自由診療・自由診療科標榜に歯止めをかけている実態があるが、これも我が国ではハードルが高そうだ。
だがしかし、県の医療局が来年の収益が90億円も赤字になることを発表し、経営の抜本的な見直しが迫られる状況下にある中、遅きに失している感は否めないが地方に勤務する医師への支援は不可欠であり、なんとか突破して欲しいと念ずる。
【関連する記事】