東北復興工事、入札経ず契約 既存事業に費用上乗せ5件
【日本経済新聞電子版 2024年2月19日 5:00 (2024年2月19日 18:06更新) 】
国発注の東北復興工事で、競争入札や随意契約を実施せずに施工された工事が5件あることが分かった。別の既存工事の受注業者と増額契約を結び、工事を依頼して費用を紛れ込ませていた。5件の総額は35億円超。入札で受注業者を決める公共工事のルールを逸脱しており、専門家は契約の競争性確保を定める会計法などに抵触する可能性を指摘する。
公共工事は、着工後に想定外の地質や地盤に遭遇したり、災害の影響を受けたりして追加工事が必要になる場合がある。「変更契約」と呼ばれる増額手続きで、発注者と受注業者が一対一で見積もりの提示を繰り返し契約金額を決める。
国土交通省は変更契約の有無や内容、契約額を公開しているが、内容を把握するには一部を除き、地方整備局の庁舎に出向いて資料を閲覧するか、情報公開請求するしかないのが現状だ。
このため日本経済新聞は、落札額が10億円以上の国の公共工事247件(2018〜20年度)の契約書類を情報公開請求した。その結果、入札を経て契約すべき新規工事費を既存工事の費用に上乗せする変更契約が、東北地方整備局管内で少なくとも5件あることが判明した。
5件はいずれも20年以降、岩手・福島両県で施工された復興支援道路の関連工事で、工事費の総額は35億4500万円に上る。5件のうち3件は一度も入札にかけられず、残る2件は2回ずつ入札を実施したが応札者がいなかった。応札者がいない場合は、特定の業者と随意契約を結ぶべきだとの指摘がある。
入札時の予定価格が3億円を超す工事で変更契約を結ぶ場合、地方整備局長(支出負担行為担当官)の決裁が必要になる。日経が入手した5件の契約書にはいずれも東北地方整備局長の名前が記載されていた。
国による歳入徴収や契約などを規定した会計法29条の3は、一部の例外を除き「契約を締結する場合は公告して申し込みをさせることにより競争に付さなければならない」と明記。入札契約適正化法3条も「入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性が確保されること」と定める。いずれも罰則はない。
元会計検査院官房審議官の星野昌季弁護士は「今回の件が事実なら、適正な手続きを踏まずに新規事業を実施し、支出根拠のない予算を執行したこととなり、会計法令に抵触する可能性がある。原因究明と同種事案の有無の検証が必要だ」と指摘する。
同地整局道路工事課は取材に対し、5件の工事費上乗せを認めたうえで「当時は入札不調が多く、復興事業を推進する時代背景を踏まえると適正だった」と主張した。工事を受注した建設会社の一社は「復興支援道路の全線開通に向けて重要な事業だと地整局から要請を受けて施工した」とコメントした。
災害復興には迅速な復旧工事が不可欠だが、公共工事の契約ルールを逸脱して良いわけではない。変更契約の透明性を確保するルールづくりが求められている。
本記事で岩手県の工事案件で指摘をされているのは
新区界トンネルの舗装工事
当初の請負金額は23億2700万
変更契約で追加した別工事は、別のトンネルの舗装工事
変更契約のうち別工事費用は、約8億
となっている。
東日本大震災関連の復旧工事には、いろいろな意味で一般工事とは別の圧力がかかっていたとは推察するし、一定程度スピード優先やむなしの空気もあったのは事実。しかし、冷静になって考えれば、例えば新笹ノ田トンネルのように幾重にも手順をかまされてなかなか前に進まない案件もあり、そうなると実質比較できない案件とは理解しつつもイレギュラーな事案が存在したことが明らかになったからには納得できない気持ちになる。
2024年02月19日
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