2024年01月18日

急がれる減災対策

避難場所5000カ所に津波リスク 5m以上浸水700カ所

【2024年1月17日 17:49 日本経済新聞電子版】

被災時に命を守る自治体指定の避難場所の約5000カ所が大規模な津波で浸水する恐れがあることが、日本経済新聞の調べでわかった。能登半島地震では津波に弱い避難場所の存在が顕在化した。同様の避難場所は西日本に多く、約700カ所で5メートル以上浸水する可能性がある。非常時の混乱を防ぐため、自治体と国が一体となってリスクを軽減する取り組みが欠かせない。

「家を出ると、泥水のような黒い波がゴーッという音をさせながら押し寄せてきた」

1月1日に発生した能登半島地震で4メートルを超える津波が襲った石川県珠洲市在住の梶武夫さん(89)は大津波の警報発令後、直ちに避難を考えた。だが、最も近い「指定緊急避難場所」の公民館は海岸からさほど離れていない。「逃げ込んでも津波被害に遭う可能性がある」と判断し、少し離れた学校まで走った。

避難場所の公民館はすぐそばまで津波が迫った(石川県珠洲市、国土地理院の写真や資料を基に作成)
全国の市町村は地震、津波、高潮などに備え、それぞれで緊急の避難場所を指定している。ただ、災害情報論を専門とする東京大の関谷直也教授は「どの災害時にどこに逃げればいいかの周知は広がっていない」と指摘する。珠洲市の公民館は今回の津波で浸水しなかったが、避難場所で被害に遭った、という事態はいつ起こってもおかしくない。

能登半島地震では2011年の東日本大震災以来となる大津波の警報が発令され、地震と津波が同時発生する中での緊急避難の難しさが浮き彫りになった。日経は各地域で試算された最大クラスの津波を前提とする「津波浸水想定区域」の公開データを活用し、全国の「指定緊急避難場所」との重なりを調べた。

垂直避難が可能な津波用(約4万カ所)以外の7万3506カ所の避難場所うち、4989カ所(6.8%)が津波リスクの高い区域内にあった。2569カ所で1メートル以上5メートル未満、727カ所では2階建ての建物が水没する5メートル以上の浸水の可能性がある。

避難場所の代表例は学校や集会所などの公共施設だ。低層の建物の場合、避難後の浸水被害で逃げる場所がなくなることもあり得る。

災害対策基本法は、災害対応は地域の実情に詳しい市町村が担うと規定している。11年の東日本大震災を機に、津波への備えの強化を促す法律も制定された。市町村には最大クラスの津波を想定し、避難場所や一時的に生活する避難所を指定したり、地域防災計画を作成したりする義務がある。

対策に前向きな市町村では、交付金を活用して「津波避難タワー」を設置したり、民間と協定を結んで中高層ビルを「津波避難ビル」に指定したりする動きが見られる。代替の避難施設を確保するこうした努力が、全ての市町村に求められる。

日本には地震を引き起こすプレート(岩板)の境目や断層が多くあり、政府の地震調査委員会は南海トラフ地震や首都直下地震にとどまらず、大規模な地震がいつどこで起きてもおかしくない状況と警告する。

市町村は防災を担当する職員数や災害時の経験が少なく、現行の体制下での防災対策は必ずしも機能していない。防災に詳しい関西大の河田恵昭特別任命教授は「市町村は津波への備えが甘く、国や都道府県の役割も曖昧になっている」と指摘する。代替施設の整備や住民への周知といった市町村の防災対策が機能するように、国や都道府県も効果的な制度づくりや財政支援で後押しする必要がある。


昨日のブログ投稿に関連した新聞記事を転載します。

十勝沖を含む千島海溝沿い超巨大地震に備えて本県でも沿岸部の「津波想定浸水区域」マップを作製するなど予測レベルでの行動はすでに起こしていますが、上記記事の最後の部分、市町村への防災対策が機能するように〜は最も大事な視点だと私も痛感しました。
posted by 飯沢ただし at 00:20| 岩手 ☁| Comment(0) | My Diary  【ふつうの日記】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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