3⃣ 産業経済
識者は県中小企業診断士協会顧問 宮 健氏
宮氏:達増知事は、歴代知事が進めた企業誘致などによる県民所得の向上を継承、発展させてきたと言える。特にキオクシア北上工場(北上市)をはじめとする半導体を中心にした工場立地は非常にインパクトが強い。自動車産業の集積に匹敵する。
キオクシア社に関して県が貢献したのは、企業局の工業用水の調達を50年という長期間確保したことだけではないか。半導体の市況が好転したことにキオクシア社自身が即座に反応し企業努力で大型設備投資を行い、北上市(県ではない!)メインで対応した。この事実は曲げられない。
自動車産業も東日本トヨタ岩手工場の恩恵を得て本県に関連産業が進出していることは事実であるが、トヨタ社の東北地方の再編によってオイシイところは宮城県にことごとくさらわれてしまったことはあまり報道されていない。宮城県は富県構想を打ち出して仙台港へのアクセス整備などで戦略的にトヨタ社再編の果実を奪い取った。
トヨタ社の経営陣トップと達増知事はどれほどのコミニケーションを図ってきたのか甚だ疑問。そうした対談記事を目にしたこともないし、私のトヨタ社長とのトップミーティングに関することや将来のトヨタ社の戦略についても私の質問に対して自分の言葉で答えられなかった。達増知事がトヨタ社に対して積極的にアクションも起こした形跡も見えない。
今日の北上川流域の経済活況は従前の成果を踏襲したものであり、関連産業の誘致については県職員個々の努力による成果にとどまっており、決して達増知事主導によるものではないと私は断言する。
宮氏:(一次産品については)加工して付加価値を付けて販売するトレンドをさらに強めていく姿勢が今後の県政に必要だ。
宮氏のこの課題認識については同感。県内の所得格差を縮めるためにもこの政策は重点化させなくてはいけない。土地利用型農業に関してはコミニティ維持の観点からもさらに研究し施策立案すべきである。残念ながら県庁全体にこの考え方は浸透されていない。
宮氏:達増知事が消費地に出向いて県産品を売り込んでいることは評価できる。
果たしてその効果やいかに。姿勢だけではだめ。私は青森県、山形県の知事との情報発信力との差は誰も否定できまい。相対比較も必要。
宮氏:達増知事は「幸福」という言葉をよく使う。高邁な精神を感じるが「幸福」というものが具体的に県民の中に広がっているかは分からない。それは産業・経済に携わっている人たちにも言えることだ。自分の従事してきた仕事、それを通じた幸福感というものをどの程度向上させてきたのか、抽象的でない何かが欲しいと注文つけたい。
まさに我が意を得たり!私も経済人の一員としての立場からも「幸福」というゴールが見えないことをくりかえし使われるのは違和感がある。力強い本県の特色を生かした産業振興指針に基づいたリアルな施策を経済人は求めている。言葉遊びで自己満足している状況ではない。
2023年05月23日
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