【日本経済新聞電子版 2011年9月21日】
中国の不動産大手、中国恒大集団発のリスク連鎖に警戒感が高まっている。中国政府は住宅価格の上昇が中国の格差問題を生む一因とみて、不動産業界に規制の矛先を向ける。自力再建が困難な恒大を政府がどう処理するかは不透明だ。恒大が債務不履行(デフォルト)に陥れば、約2兆円のドル建て債を通じて国際金融市場にショックを与えるだけでなく、個人消費の冷え込みなどを通じて中国経済にも大きな打撃を与えかねない。
中国の住宅市場は、個人消費や地方財政を支える土台となってきた。恒大問題をきっかけに住宅市況が下落に転じれば、中国経済への大きなマイナスの影響は免れない。米バンク・オブ・アメリカは21日、2022年の中国の成長率を6.2%から5.3%に引き下げた。中国政府が処理を誤れば金融システムリスクを引き起こしかねず、政府の恒大への対応は、中国のみならず世界経済の行方にも大きな影響を与える
恒大を取り巻く状況は厳しい。23日に利払い日を迎える米ドル債の直近の価格は額面1ドル当たり30セントを下回る。利回り換算では500%を超え、新規の社債発行による借り換えは絶望的な状況だ。株式市場からの資本調達も容易ではない。
恒大は負債の返済資金を捻出するため開発中のプロジェクトや子会社の売却交渉を急ぐが、思うように進展してない。抜本的な経営再建のために1兆9665億元(約33兆4000億円)にのぼる負債を処理すれば、内外の投資家や銀行、取引先や顧客など幅広い層に損失が及ぶ。こうした見方が世界同時株安の主因となっている。
代表例が海外投資家向けに販売された約195億ドル(約2兆円)の米ドル債だ。ハイイールド(高利回り)債ファンドなどを通じて世界の資産運用会社などが投資しており、米ブルームバーグによると、英アシュモア・グループは残高が約4億ドルに達するという。リフィニティブによると、資産運用最大手のブラックロックなども保有する。日本は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2020年度末時点で恒大とそのグループ企業の社債を59億円、株式を37億円保有する。
恒大の債務総額は中国の名目国内総生産(GDP)の2%に相当する。借入金は6月末時点で5717億元にのぼる。インターネットで出回る資料では、借入先として銀行のほか、信託会社の名前が並ぶ。金額は不明だが、「理財商品」という形式で信託会社を通じて個人投資家から多額の資金を調達しているもようだ。建設会社など取引先へ支払うべき買掛金が9629億元、住宅の引き渡しが済んでいない顧客に対する「契約負債」が2157億元にのぼる。
焦点は中国政府の対応だ。習近平(シー・ジンピン)指導部は「共同富裕(ともに豊かになる)」のスローガンを打ち出し、住宅価格の高騰の元凶として不動産会社に厳しい目を向ける。
米格付け会社S&Pグローバルは20日「中国政府は恒大を直接支援することはない」との見解を公表した。一方、「中国政府は銀行に対し資金繰り支援について救済のための指示をする可能性が高い」(クレディ・スイス)との期待も根強い。
いつかは来ると予想されていた隣国の不動産バブルの崩壊。焦点は隣国政府が財政支援をどれだけするか。
恒大という会社は高利回りの金融商品も市場に出しており、テレビニュースで放映されている元本の取り付けデモはそれにあたる。
日本のバブル崩壊やアメリカのリーマンショックなど過去の事例もあったろうに同じことを繰り返すのは人というのは欲の塊であることの証左とも言える。
まだ先々どうなるか不透明であるが、コロナ禍にあって世界的金融大不況ともなれば一気にグローバル経済が動く。恐ろしい。
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