【日本経済新聞電子版 2021年6月13日 22:20 (2021年6月14日 13:12更新)】
【コーンウォール(英南西部)=三木理恵子】主要7カ国首脳会議(G7サミット)は13日午後(日本時間同日夜)、閉幕した。共同宣言で「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と言及した。「自由や平等、人権の保護などの力を使って挑戦に打ち勝つ」と記し、民主主義諸国の結束を訴えた。
日本の外務省によるとG7首脳の共同宣言で台湾海峡に関する文言が入るのは初めて。
菅義偉首相は討議終了後、記者団に「自由で開かれた国際秩序の確立に努めることを方向付けできた」と語った。議長国のジョンソン英首相は記者会見で「G7がすべきなのは民主主義と自由と人権の利点を世界に示すことだ」と総括した。
今回のサミットは覇権主義的な行動を強める中国にG7がどのようなメッセージを出すかに注目が集まった。
共同宣言は中国の海洋進出を念頭に「自由で開かれたインド太平洋の維持の重要性」を指摘した。東・南シナ海の状況についても「深刻な懸念を抱いており、現状を変更し、緊張を高めるいかなる一方的な試みに強く反対する」と言明した。
新疆ウイグル自治区の人権問題や香港の統制強化にも触れた。「中国に人権と基本的自由を尊重するよう求めるなど、我々の価値観を推進していく」と唱えた。
経済面でも中国を名指しし「世界経済の公正性や透明性を傷つける慣行や市場をゆがめる政策に対し(G7が)集団的に対応する」と明記した。
中国の広域経済圏構想「一帯一路」への対抗も意識し、上質で透明性の高いインフラ投資に取り組む方針を示した。G7で作業部会を立ち上げ秋までに具体策を報告する。高速通信規格「5G」分野など通信機器の供給網の協力も含めた。
サミットの共同宣言に中国に関する内容をここまで書き込むのは異例だ。
気候変動問題も重要議題になった。菅首相は温暖化ガスの排出削減対策が施されていない石炭火力発電に関し「政府による新規の輸出支援を年内で終了する」と表明した。宣言では、石炭火力発電への公的な国際支援を21年末までに停止すると書き込まれた。
東京五輪・パラリンピックは「新型コロナ克服に向けた世界の団結の象徴」と位置付けた。G7として「安全、安心な方法での開催の支持」を表明した。
菅首相は13日、記者団に「何としても成功させないといけないとの思いだ。しっかり開会し成功に導かないといけないと決意を新たにした」と発言した。サミットで各首脳へ感染対策などを説明し「全首脳から大変力強い支持をいただいた」と話した。
G7が終了し、中共(中華人民共和国)に対する牽制内容を多く盛り込んだ異例の共同宣言となった。中共の覇権主義によって東アジアの安全が脅かされている現状を見れば、当然の内容であると評価する。
特に、台湾海峡の安全確保については実効性のある具体的な対策を望みたい。その点では我が国の役割は大変重要だ。
中共の覇権主義の延長上には緩やかな統治などない。香港を見れば明らかである。絶対支配は人権など存在しない。我が国がそうなっては絶対にあってはならない。
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