原発処理水、放出決定に10年 国際基準の7分の1で海に
【2021年4月13日 11:38 日本経済新聞電子版】
政府は13日、首相官邸で東京電力福島第1原子力発電所の廃炉に関する関係閣僚会議を開き、原発敷地内にたまり続ける処理水を海に放出する方針を決めた。処理水はトリチウム(三重水素)を含むが、科学的には安全と専門家が分析し、国内外の原発でも海洋放出している。原発事故から決定まで10年かかったのは、東電の苦境ぶりも映している。
政府の決定を受けて、東電は放出に向けた方針を策定する。放出の手順について原子力規制委員会の手続きを進め、配管の設備工事などを終えて実際に放出を始めるのは2年後になる。
福島第1原発は2011年3月の東日本大震災の津波で炉心溶融事故を起こし、高濃度の放射性物質に汚染された水が発生している。東電が専用装置で主な放射性物質を取り除くが、処理した水には放射性物質のトリチウムを含む。トリチウム水は水よりわずかに重いがほとんど区別がつかず、現在の技術では水と混ざると分離することが極めて難しい。
日本は通常の原子力施設で発生したトリチウム水を海洋放出する際の規制基準を同6万ベクレルとしている。国際的な被曝(ひばく)基準を定める国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告が線量の限度を年1ミリシーベルトと設定しているのを踏まえて決めた。仮に毎日2リットル飲み続けても健康影響が出る水準を十分に下回る。東電はタンクにたまる処理水を海洋放出する際に、放出前に処理水を海水で100倍以上に薄め、1リットルあたり1500ベクレル未満にする。国の基準の40分の1の水準だ。
各国のトリチウムの基準値は異なるが、飲料水の上限値の基準は、例えばオーストラリアで1リットルあたり7万6000ベクレル、世界保健機関(WHO)が同1万ベクレル、ロシアは同7700ベクレルだ。WHOが出している国際基準の7分の1の水準で、日本の海洋放出の基準よりも飲料水の基準の方が緩い国もある。
トリチウム水は国内外の通常の原発や再処理工場でも発生し、各電力会社などが海水で薄めて各国の基準値以下にしたものを海に放出している。実際、中国や韓国でもトリチウムを含む水は海に流している。経済産業省によると福島第1原発のタンクにためているトリチウム量は860兆ベクレルで、韓国の月城原発が6〜7年で放出する量に相当する。フランスの再処理工場であれば1年未満で放出している。これらの国でも環境影響は確認されていない。
トリチウムは宇宙から降り注ぐ放射線によって自然に生じる物質でもある。土壌や大気中にはトリチウム以外の放射性物質もあるため、処理水の海洋放出による環境影響は無視できるとされる。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は20年2月、処理水の海洋放出について「科学的な分析に基づくもので、環境に影響を与えない」と指摘した。
政府が処理水を海に放出する方針を決定してから、内外の動きが激しくなってきた。岩手県議会においても先の臨時議会で国民への十分な説明と風評被害対策を求める決議を採択し、意見書として政府機関へ送付することとした。
しかしながら、原発事故の処理を前に進めるには膨大な処理水の対処は不可欠だ。残念ながら海洋への放出しか選択肢がないのが現実である。現実から目をそらしてはいられない。その解決には科学的に考察して実行に移しか手立てはない。処理水をどうしても汚染水と称したい方々は放出は絶対反対をお唱えだが、果たして海洋放出の他に手立てがあるのか、あるのならお示し願いたいものだ。
一方でIAEAが第三者機関としてモニタリング管理していく方針も示されている。情報公開を正確に行うためには必要な判断と考える。
上記記事にあるように基準となるのは国際基準だ。
国際基準に照らしつつ、風評被害対策をしっかりやるしかないのだが、政府には丁寧の5乗くらいの説明が求められる。残念ながら戦後教育の中で放射線に関する安全教育はほとんど行われてこなかったことを起因として正確な放射能知識が国民に浸透していないのが現状にある。政府は説明を尽くし、絶対に見切り発車的行動はあってはならない。
いずれにしてもこの機会にしっかりと系統的に学習を繰り返して行うこととしたい。
2021年04月17日
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