【日本経済新聞電子版 2020/11/6 20:29 (2020/11/7 6:53更新)】
【ワシントン=永沢毅】米大統領選は6日、残る激戦5州の開票が佳境を迎えた。民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)は激戦州で勢いを加速し、当選に必要な「選挙人」の過半数の獲得に迫る。窮地に立つドナルド・トランプ大統領(74)は根拠を示さず選挙に「不正」があると主張し、訴訟で抵抗する。
全米538人の選挙人の過半数270人以上を争う大統領選で、バイデン氏は253人を確保した。トランプ氏は214人にとどまる。
焦るトランプ氏は郵便投票の集計を食い止めようと打って出た。同氏の陣営は5日、ネバダで開票の差し止めと集計の監視を求める訴訟を新たに起こすと明らかにした。投開票を巡る法廷闘争はペンシルベニア、ジョージア、中西部ミシガンを含む計4州に広がった。ただジョージアやミシガンでは5日に相次ぎ州裁判所が訴えを却下した。
トランプ氏が乱発する訴訟は選挙制度を揺るがす。「郵便投票は腐敗している。彼らは不正を働こうとしている」「彼らはどのくらいの票が必要かを計算し、それを見つけることができるようだ」。トランプ氏は5日のホワイトハウスでの記者会見でまくし立てた。
本人確認できない票が集計されているなどと訴えたが根拠は定かではない。民主主義の擁護者であるはずの米大統領が選挙の信頼性を傷つける異様な光景だ。NBC、ABC、CBSの米3大テレビは記者会見の生中継をほどなく打ち切った。
トランプ氏は敗北時に政権移行に応じるかについても明言を避ける。異例の展開をたどる大統領選が米国の分断をさらに深めるのは避けられない。
バイデン支持者は票を数えろと、トランプ支持者は票を数えるのはやめろと訴える。
とても先進国の選挙とは思えない光景がテレビメディアからいまだに流れている。この混迷の終止符はいったいいつ打たれるのだろうか。
訴訟の国アメリカとは言え記事にもあるように乱発する訴訟は選挙制度の根幹を揺るがす。妻の従弟がアメリカに在住しており、トランプ政権スタート時から今回の選挙に至るまで240年間培ってきた人種の融和が一気に分断へと移行してしまったことを嘆いていた。訴訟の乱発は共和党の一部からも非難が出ていることは重くとらえるべきであろう。
コロナ禍によって郵便投票を取り入れた州へ連邦政府の権限が及ばないところもアメリカ的で印象深いが、こうした混乱を見てほくそ笑んでいるのは中国であり、この間隙をどのように突くか準備を進めていることを忘れてはならない。
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