まだコロナ禍は収束期には至らないが、常に先のことを準備しておかねばならない。
内部留保・長期雇用は強み コロナ禍で「日本型経営」再評価
岩村充・早大大学院教授に聞く
【日経Biz 対談シリーズより 2020.4.22】
■「コロナ以前には戻れず経済のルール変わる」
――岩村教授は、最低少なくとも3カ月はフリーズド経済が続くとみていますね。企業経営者は新型コロナの収束後にはどう備えておくべきでしょうか。
岩村早大大学院教授は「批判されてきた日本型経営」に脚光が浴びる可能性を説く
「新型コロナの影響はリーマン・ショックの比ではなく、1970年代のニクソンショックやオイルショックと同じ性格だ。国際経済や企業経営のルールが大きく変わり、もう以前には戻れない。一気に普及したテレワークや遠隔会議なども、ビジネスや金融の現場を大きく変えるだろう」
――新型コロナの感染で国際的なサプライチェーンの中心だった中国の生産活動が止まったこともあり、グローバル戦略を見直す機運も広がっています。
「雇用慣行や手厚い内部留保、長期的戦略など日本の経営モデルが再評価される可能性がある。新型コロナの収束後は、企業価値を決める指標に事業の存続性が重視される。足元の業績が好調でも、今回のような事態に対応できない企業には融資しづらい」
「従業員の確保は何より大切になる。とりわけ中小企業にとって守るべきは信用であり雇用だ」
岩村教授が示唆するコロナ収束後の我が国の経済については私の認識と同じだ。過度なグローバル戦略は見直され、コスト重視から信用性のある製品やサービスには新たな価値が増すこととなる。ただしっかり押さえておかねばならないのは「栄光のあの日には帰れない」ことだ。
中華人民共和国は急激な中間層の増加によって米国を凌ぐ購買力をつけたが、その中間層はこれからは財産の保持のためにあらゆる手立てを講ずるだろうと英国の経済学者ファーガソン氏は語っていた。中間層が国をも脱出することをいとわない可能性を示唆した上で政治体制と矛盾する動きは今後世界経済にも大きな影響を与えることになるだろうし、人間の欲は果てしないからおそらくそうなるだろう。中共国内の動きから目を離せない。
日本式経営の中で終身雇用が見直されることはいいことだと思う。人材派遣のシステムが製造業まで拡大したことは格差社会を生み、若年層の人生観まで大きく変容させてしまった。コロナ後はテレワークの浸透化が進み、大企業ほど働き方に大きく変化を及ぼすことが予想される。教育現場も同様だ。それは地方にもチャンスが巡ってくることでもある。安全な医療制度、人間の情操を豊かにする自然豊かな環境、教育レベルが維持できる制度、これらを一体的に整備すれば都会に住まなくても十分な生活ができる。
日本の商社が日本式生産ノウハウを授けて中共に野菜工場を建てて日本が製品を輸入するというような動きはもはや社会が容認しないだろう。なぜならSARS,MARS,コロナ発生は固定化されている。今回のコロナ禍で世界全体が大きな教訓を得ただろう。食糧供給基地を標榜する本県こそそうした動きに今すぐにでも反応すべきだ。
人が人として豊かに暮らせる拠り所をつくること。いまからしっかり前々と考えていく必要がある。
2020年04月30日
この記事へのコメント
コメントを書く