【日本経済新聞電子版】(2019/12/18 23:28更新)
いすゞ自動車は18日、2020年末をメドにスウェーデンのボルボ傘下のUDトラックスを買収すると発表した。いすゞはUD社の事業価値を2500億円と見積もっており、この金額を基に買収額を詰める。いすゞとボルボは戦略的提携を締結し、自動運転や電動化などの技術開発や、お互いが得意とする商品や販売エリアなどで相互に支援するなど、包括的な協力関係を構築する。
UD社は旧日産ディーゼル工業がボルボの完全子会社になった後、10年に社名を変更して発足した。今回の買収で日本のトラックメーカーはいすゞとUD社、トヨタ自動車傘下の日野自動車、独ダイムラー傘下の三菱ふそうトラック・バスの3陣営に集約される。いすゞは買収によって日本国内の中大型トラックの販売では日野自動車を抜き首位となる見通しだ。
同日都内で記者会見した片山正則社長は「急激な環境変化に対応するためには商用車メーカーとの協業が最も効率的だ」と話した。同席したボルボのマーティン・ルンドステット社長も「長期的、技術的な提携だ。どんな投資が必要になるかなど互いに共有できるところは多い」と応じた。
新技術の分野ではボルボは特定の場所で運転手が乗らずに走行する自動運転の「レベル4」の実験を欧州で実施するなど開発で先行している。ルンドステット社長は「大型投資もしている。技術的投資を続け、新技術について一緒にやっていきたい」と話す。開発費用の面でも協力することで迅速な実用化を目指す。
▼いすゞ自動車 1916年創業でトヨタ自動車や日産自動車と並んで日本で最も古い歴史を持つ自動車メーカー。日本やタイに生産拠点を持ち、アジアを中心に事業展開する。2019年3月期の連結売上高は2兆1491億円、同営業利益は1767億円。
▼ボルボ スウェーデンを拠点とする商用車・建設機械メーカー。ボルボのトラック部門の18年12月期の売上高は2503億クローナ(約2兆9000億円)、営業利益は195億クローナ。乗用車部門は99年に売却し、別会社のボルボ・カーとして事業を続けている。
正直なところ、いすゞから動き出すとは思ってもみなかった。ボルボとは紆余曲折があったが以前販売部門のみ提携していたこともあり、交渉に大きな壁はなかったのだろう。グローバル市場の開拓や商品開発のコスト削減に関してはデメリットはないと思う。
さて、子会社のUDトラックスをいすゞが面倒を見るという国内的な問題の方がややこしそうだ。特に販売ディーラーの再編にはコストがかかりそうである。
国内に主工場を置くトラックメーカーは長く続いた4社体制から3社体制になるが、欧州などの状況をみるとまだまだ再編劇はありそうだ。トヨタ・日野がダイムラー・三菱ふそうに対して何かを仕掛けるかが注目点か・・・
いずれにしても縮小する経済、環境保全や安全対策のために必要な開発費の増大、大きく経済や社会が動き出している中で大企業ほど生き残るのに苦心しているのが浮き彫りになっている。
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