復興の主役、官から民へ 人口減が地域経済の重荷に
【2019/3/10 5:59 日本経済新聞 電子版】
東日本大震災の発生から11日で8年を迎える。原発事故の影響はなお色濃く残るが、巨額の政府予算の投入で被災地のインフラ整備や住宅再建は一定のメドが付いた。ただ、沿岸部では定住人口の減少が止まらず、「官製復興」には限界がみえる。成長のエンジンを民主導に切り替えるには地域の底力が試される。
震災から8年がたち、津波で甚大な被害を受けた沿岸部とそれ以外の内陸部の経済格差が目立ってきた。自動車や半導体の大型投資で勢いを増す岩手、宮城の内陸の一部とは対照的に、沿岸部の再生への足取りは鈍り始めている。
「補助金を使ったことを後悔している」。冷凍食品製造のヤマトミ(宮城県石巻市)の千葉雅俊社長はこう話す。15年に15億円で新工場と加工ラインを導入。投資額の8分の7を賄ったのが、国の復興関連の補助金だった。だが足元の売上高は震災前から半減。自己負担で借りた2億円の債務返済が重くのしかかる。
宮城の水産加工会社は補助金申請をためらっていたが、自治体から「今しか予算がとれない」と背中を押されたという。復興を当て込み設備投資に踏み切った企業は多い。誤算だったのは回復しない売上高だ。
東北経済産業局によると、被災企業で震災前の水準まで売り上げが戻ったのは46%。損壊した工場設備の復旧に時間がかかり、その間に多くの取引先を失った。「営業再開まで数年も待ってはくれなかった」(石巻市の布施商店)
岩手、宮城、福島の県内総生産は復興特需がかさ上げし、震災前の水準に戻した。だが公共投資のピークは過ぎ、16年度は3県がそろってマイナスとなった。
再生の歩みが鈍る背景には想定外の早さで進む人口減もある。震災前の10年と15年を比べた減少率は福島で5.7%、岩手は3.8%。全国平均の0.8%を大きく上回る。土地の区画整理に時間を要するうち多くの住民が地元を離れた。
宮城の沿岸部では有効求人倍率が2倍近くで高止まりし、求人を出しても人が集まらない。頼りは海外からの技能実習生。水産加工の大膳(宮城県塩釜市)は従業員の4人に1人が外国人だ。後藤昭文常務は「実習生が集まらなければ復興はままならない」と話す。
再生のエンジンを再び回すカギは民間の開発力にある。地域に新たな産業や事業モデルをいかに芽吹かせられるかが問われる。
23年度には物質の構造を原子レベルで分析できる次世代放射光施設が仙台市にできる。東北の産学連携の先端研究拠点として宮城県などが誘致した。自らの技術やアイデアを磨く地域のスタートアップ企業や中小は着実に増えている。
国は福島を除き21年を復興の区切りとする。次のステージに向け「大胆な規制緩和や市場開放で企業のイノベーションを後押しすべきだ」と東北大学の増田聡教授は指摘する。世界に東北発の復興モデルを示すため、国や自治体がすべきことはまだ多く残っている。
私は早い時期から被災地の産業振興についてエネルギーの地産地消など具体的に提言してきたが、部分的には進んだが総合的には進まなかった。被災地自治体の産業復興にはグループ補助金が即効性があり、一番の近道と誰もが思っていたが、実際には地域のマーケットは人口減少とともに縮小し、域外のマーケットもすでに激しい競争にさらされていて見通しが甘かったことは否定できない。
反省することは実に多い。
瞬間風速で人口が戻ったとか、うまくいっているとかという県庁トップのいい話ばかりが喧伝されて問題の本質を解決していないことがこの記事を見てその認識を新たにした。
三沿道と東北自動車道は昨日つながった。
これを沿岸地域の発展に結び付けていかねばならない。
2019年03月10日
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