次世代加速器「ILC」の国内誘致 来年3月までの態度表明を
【科学&新技術 2018/12/7 18:28 日本経済新聞電子版】
宇宙誕生の謎を調べる次世代の巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致について、ILC計画を進める科学者の国際組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」などは、日本政府が態度表明する期限を2019年3月7日まで延期した。これまで年内の態度表明を求めていた。
7日に都内で開かれた先端線形加速器国際研究所建設推進議員連盟総会に出席したLCCのリン・エバンス代表が明らかにした。日本誘致の是非を議論している日本学術会議の検討委員会で議論が終わっておらず、日本政府が年内に態度を表明するのが難しいとみられるためとしている。
世界の主要な加速器研究所の代表が集まる国際将来加速器委員会(ICFA)が19年3月7日から東京で開く会合に間に合うよう、日本政府が意思表明をするよう求めている。エバンス代表は「ILCには世界中の研究者が期待している。期限までに日本政府の前向きな声明が出されることを切望している」などと語った。
ILCを日本に建設する構想は日米欧を中心とする世界の物理学研究者が推進している。19年初めに欧州の今後の物理学研究の方向性を決める計画がまとめられるため、その計画にILCを盛り込むために年内の意見表明を求めていた。
これに対応して文部科学省が7月、国内の科学者の代表である学術会議に審議を求め、審議が進んでいる。ただ11月14日に誘致に慎重な答申案が検討委員会で示されたものの、最終的な意見のとりまとめは遅れている。
リン・エバンス氏の発言はまさにILCを前に進めるか否かの最終デッドエンドを示したことになる。
岩手県のILC室幹部の話によると本県の視察団がCERNを訪問した際にCERNの所長は「期限は守りなさい」との発言があったそうで、ということはエバンス氏が責任を持って所長を説得するということを意味する。
となると3月7日までに政府が方向性を決められないとエバンス氏の顔に泥を塗ることに他ならない。すなわちかつての米国がそうであったようにこの学界における我が国の信用度までかかってきているのだ。
残された時間はあと3か月。あらゆる力を結集して事を成すように頑張らねばならない。
2018年12月09日
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