形をつくって後から中身を検討する。こんなことは民間では考えられません。
以下、反対討論の原稿をそのまま転記します。

いわて県民クラブの飯澤匡でございます。
只今上程されております議案第3号「岩手県部局等設置条例の一部を改正する条例」に反対する立場で会派を代表して討論を致します。
この条例案の内容は
(1) 文化スポーツ部を設置し分掌事務について定めること。
(2) 国体・障がい者スポーツ大会局を廃止すること。
となっております。
私たち「いわて県民クラブ」は岩手県議会基本条例に定められた第9条の二項、議会は知事等と異なる立場及び権能を生かし、活動しなければならない。第10条、知事等の事務の執行が、適正かつ公平に、及び県民の意向を的確に把握しつつ能率的に行われているかどうかを監視するとともに、これが所期の効果及び成果をあげるかどうかを評価し、知事等に対し必要な是正措置または対応を促すものとする。この条例の趣旨を十分に汲んで以下反対する理由を申し上げるものであります。
そもそも私たちは本県が持っている文化・スポーツの多様な資源については高く評価するものであり、二巡目岩手国体と障がい者スポーツ大会の成功を機にその力を地域振興に寄与させようとすることには全く異存がありません。特に2019年ラグビーワールドカップ釜石開催の成功には県の総力をあげて対応することを切望するものです。
しかし、このたびの文化スポーツ部の新たな部の設置については只今述べた意見と目的が完全合致するとはいえません。なかんずく新組織の設置には施策の具体性や人員規模が適正であるのか十分に吟味する必要があると考えます。なにより現時点における本県が克服しなければならない使命(ミッション)を決しては忘れてはなりません。最重要課題である東日本大震災からの復興を成し遂げるために、県の総合力をいかに効率的に人材投資していくか、この点は組織体系を構築と維持をするうえで県が注力すべき最大のポイントであるはずです。
反対とすると理由の第一は、文化・スポーツに関係する事務の知事部局の一元化に向けてバックボーンとなっている現在策定中の「岩手文化・スポーツ振興戦略」の骨子案をみれば平成33年度までの概ね5年間に、県として戦略的に取り組む施策に指針とするものの実際は戦略的な具体性を欠いている点にあります。理念のみが先行し、県が果たすべき段階的な成果を検証するには適格性を欠いていると言わざるをえません。特にも文化・スポーツには付帯する県政課題として観光部門戦略が組み込まれていない点は、部としての格が維持されるのか疑問に感じます。被災地の実情を鑑みれば、スポーツや文化の力を持って観光を手掛かりにして産業振興を図るべきです。百歩譲って医師確保対策室に例があるような商工労働観光部の観光課との共管にまでは最低限踏み込むべきと考えます。例をあげれば近年外航船クルーズは急速なビジネスとして発展しており、ラグビーワールドカップにもクルーズは有効に作用することが予想され、被災地の地域経済にも寄与するものと考えます。被災地の皆さんもスポーツと実利が連携している形を見ることで復興にさらに前向きになるはずです。当局は観光施策との連携については部局横断的な取り組みで補うと総務常任委員会で答弁されておりますが、これまで達増県政9年の間、部局横断的な取り組みは共通認識を得るだけに留まっており、にわかにその実効性を信用できません。組織に組み込まれて初めて議会も検証結果を得ること可能となる点を指摘させて頂きます。また、世界文化遺産の価値の発信についても言うまでもなく観光政策を抜きにしては語れず、新部の設置には観光施策あって初めて部としての格と政策の実効性が期待できるものと考えます。
理由の第二は部の設置時期と規模であります。部の規模は50人から70人規模になるということであります。いうなれば国体局を廃止して人員規模は新部に移行する形となります。震災復興のために、ただでさえ限られた人員で支えてきた県庁各部署は国体が終了すれば人員回復を見込む期待感は潜在的にあったはずです。所掌事務においては現在施策展開している部局を統合するだけで、新たな人的補強はほとんどないとの答弁でありましたが、それでは当局は現場で働いている職員のモチベーションまで考えが及んでいたのでありましょうか。なおかつ新部設置は先に指摘したようなソフト戦略を基本にした組織体系であり、はたしてこの時期にこの趣旨とこの規模という疑問は職員も十分に感じているのではないでしょうか。時期と規模が適切であったか、人心を掌握した熟慮されたものであったか現場職員のみなさんに今からでも直接聞いてみたらいかがでしょうか。答えは現場にあるのではありませんか。
今回の議案は教育委員会で所掌された文化・スポーツが知事部局との連携が可能になったのは地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正に依るものであり、他県でも先行的に組織改編されている例があります。本県も負けじと積極的に取り組もうとする姿勢は評価するものの、本県の実情に照らした施策展開が期待できなければ新組織をつくった意味が県民利益に反映しないと考えます。
よって文化・スポーツに関する事務の地事務局の一元化には只今指摘した点を指摘して部設置戦略の再考を促すものであります。
議会の議決権の行使は議会に与えられた最高の権能であり、それを行使するには責任ある対応をするのが議員としての務めであります。総務常任委員会の質疑応答でも私は納得できないことから本議案には反対の意思表示をする次第であります。我々が指摘した点を当局が明らかにせず、これから議員の指摘を十分に汲んで施策に反映させて頂きます程度では県民に対して議員の責任が果たせないものと考えます。
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