前回は東経連の主催でKEK全般の概要視察でしたが、
今回は県議会で昨年に設置された「新産業創出調査特別委員会」の県外調査。
調査の目的は、ズバリ『リニアコライダーの国内研究開発状況』について。
管理棟の大会議室で真木名誉教授からガイダンスを受けた後に
「超伝導高周波試験施設(SIF)」にて早野教授から、実験施設でリニアコライダーの概要説明を受けて、さらに3年前からスタートしたリニアコライダーの試験プラントを見学。
リニアコライダーの250GeVの衝突エネルギー電子と陽電子が走るユニットは、想像していたものより小ぶり。
ニオブ(Nb)という特殊な金属で作られています。
ちなみにニオブの値段は銀(Ag)と同じくらいで 60,000円/kg だそうです。
セルンで見たものとはかなりサイズが違います。
【2012年のCERN視察にて、近藤名誉教授と】
この実験施設は今後徐々に拡張される予定で、精度を高めていくとのこと。
そして、
「超伝導加速器空洞製作施設(CFF)」を視察。
機会センター長 山中氏から説明を受けました。
この施設で実際にユニットを製作し、技術力を高め、低コスト化を図ります。
製作が機会化されていない段階なので、溶接は困難な作業の様子でした。
最後に、リニアコライダー計画推進室長の山本氏から
「国内加速器研究施設における研究開発の取組等について」説明を受け、質疑意見交換。
昨年の12月に発表されたILCの基本設計書も見せて頂きました。
山本氏からは示唆に富んだ発言が数点ありましたので要点化すると
(⇒は私の印象)
設計書に初めてILCサイト候補地に北上高地と脊振山地が具体的に記述されたことが、日本誘致にとって大きな前進。 (私の見立てですが、設計書のサイト断面図を見ると、脊振サイトは北上サイトに比してかなり急峻な山岳地であることが誰が見ても判断できます。)
この5年で超伝導の技術は成熟を果たしつつある。目標に対して94%の成功率である。
⇒ 技術はほぼ確立したのでサイト決定と同時にモジュールの敷設が可能。
KEKはILCの技術を支える機構となり、ハブラボラトリー(中心実験施設)の役目を果たし品質の管理をする。KEKはパイロットプラントであり、今後民間に発注することを前提とし、地域に貢献することをサポートする。東北地方が高い技術を有していることは認識済である。
ILCにより知的財産を増加し、世界をリードするという意気込みを感じさせる山本氏の説明でありました。
今回の視察でKEKでは、ILC建設に向けた動きを加速させています。すでにILCのモジュールを作成し、技術力を高めている様子も拝見しました。いよいよ現実味を帯びてきた感を強くした視察内容でした。
最後に特別な計らいで B-Factory のBelle測定器を視察。
KEKではKEKBプロジェクトをアップグレードするスーパーKEKBの準備を進めており、40倍の性能アップに備えるためBelle測定器もお休み中。
上の写真は3年前の訪問時。ちょうどメンテ作業中でカバーが脱着されて検出器の中味が露出しているのがわかります。その時は下まで降りて見学させて頂きました。
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