あらためて、この間の関係者のご努力、特にもケベックの悲劇から3年の間の並々ならぬ活動に心から敬意を表します。
【近藤誠一 文化庁長官】
本日の式典では、近藤誠一文化庁長官からパリでのユネスコ会議の模様や今後の平泉の文化遺産の課題について講演がありました。示唆に富む内容でありましたのでご紹介します。
3年前のケベック会議において、登録延期という苦杯をなめてから本年の登録に至る要因となったのは
・苦渋の選択であった構成資産の絞込みを行ったこと
・高校生の英語スピーチコンテストの実施等、民間レベルでの気運醸成に努めたこと
・近藤長官が「世嬉の一」で餅膳で「果報」を引き当てたこと(今でも果報の木片を大事にしている)
何より 世界遺産とは何か と市民が自分の力で考え行動したことが最大の成果である要因である。
平泉の文化遺産が世界遺産登録になったことにより
日本人の文化・思想・価値観を世界に知ってもらう橋頭堡になったのではないか、すばらしい契機となった。
特にも次の4点は平泉が見事に体現化している。
@ 日本人の持っている自然観、「人間は自然の一部」であるという思想。自然の猛威も自然の恵みもありのままに受け入れる。西欧社会の自然を征服、人間至上主義で自然を超越してきた歴史とは全く別の価値観
A あいまいさを受け入れる。善悪を明白にしない文化。目に見えないストーリー性。
B 絶対的な平和思想。味方も敵も共に供養する。
C 多文化の吸収と洗練化。禅や茶道も元来中国の起源であるが、日本独特の進化を経ている。
今後の課題は
・資産の安定的な保全
・価値を守ることの重要さを維持・継承していくこと
・残る5つの資産の追加登録 - 日本の思想をさらに理解せしめるために必要不可欠
近藤長官のご尽力に対しては本当に頭の下がる思いであります。
ようやく成就した世界遺産登録、菅原平泉町長が式典の挨拶で述べられたように、これからがスタートラインに達したと心新たに、先人の思いを今に生きる我々が継承していかねばなりません。
すばらしい祝賀の一日でした。