「経済止めるな」米欧、ワクチン接種証明の義務化広がる
【日本経済新聞電子版 2021年8月4日 20:00 】
「わたしたちの社会(活動)に完全に参加したいのであれば、ワクチンを接種する必要がある」。ニューヨーク市のデブラシオ市長は3日、屋内のレストランやスポーツジム、娯楽施設の従業員や利用客に対し、少なくとも1回のワクチンを接種した証明の提示を義務付けると発表した。8月16日から段階的に導入し、9月13日に完全に実施する。ワクチン接種対象になっていない子供の扱いなど細かな制度設計は今後詰める。
欧州でもワクチン接種証明の義務化が進む。フランス議会は7月26日、飲食店などの利用時に「健康パス」の提示を義務付ける法律を可決した。接種完了の証明や、48時間以内のPCR検査の陰性証明、6カ月以内のコロナ完治証明を健康パスとして認める。8月9日からは健康パスを提示しなければレストランなどを利用できなくなる。
イタリアでも飲食店や映画館などの利用には6日から、1回以上のワクチン接種や直近の陰性を証明する「グリーンパス」の提示が義務付けられる。欧州メディアのユーロニュースによると、欧州連合(EU)加盟国のうち仏伊を含む13カ国が接種証明の提示義務付け策を導入済み、あるいは準備中という。
英オックスフォード大の研究者らがつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、ワクチンを1回以上接種した人の割合はドイツ、フランス、イタリアがともに6割強に達している。だが感染力の強いインド型(デルタ型)の流行で感染者が急増し、ワクチンの接種率をさらに引き上げて感染拡大や重症化を防ぐことが急務になっている。
もっとも、体質的にワクチンを接種できない人もいるほか、効果に懐疑的な見方などから接種を拒否する人々もなお一定数いる。接種証明ができなければ飲食店などが利用できない状況は「差別的だ」との批判もあり、欧州の都市で抗議デモも起きている。
日本でもソフトバンク球団が本拠地ゲームの観戦にワクチン接種証明を提示することを要件にする方針を示している。差別的な使用はもちろん配慮すべきだがワクチン接種を拡大する方策は考えていったほうがいいと思う。
本日の岩手日報の日報論壇で盛岡市の小西一樹医師が「若者は早くワクチン接種を」という論を張っていた。
ワクチン接種をちゅうちょしている若いあなたに問いたい。感染しても軽いのだからと、高をくくっていませんか。もしかしたら、あなたに感染したウイルスが猛毒性のウイルスに変異して、「あなた株」としてデルタ株のように世界中に拡散し新たな犠牲者をたくさん増やすことになるかもしれません。ワクチンを接種して一人ひとりの感染を防ぐことは、新しい変種株の出現を抑えることにもつながるのです。
こうした危機感は多くの人に浸透はしていない。メディアをつうじてワクチンの正確な情報とワクチン接種の重要性についてはもっと広く発信すべきだ。