2020年09月10日

鬱勃たる思想は何処にあるや!

加速器ILC、実現遠のく 基本構想の申請取り下げ←(-_-)
【朝日新聞 電子版 9/9(水) 22:00配信】

 宇宙の謎に迫る大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致について、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が8日、国が優先的に進める大型研究の基本構想「ロードマップ」への申請を取り下げたと発表した。岩手県などが求める早期の誘致実現は極めて難しくなった。

 ILCは日米欧で進める国際プロジェクト。岩手・宮城両県にまたがる北上山地に全長20キロのトンネルを掘り、電子などを光速近くまで加速してぶつけ、飛び出てくる素粒子「ヒッグス粒子」などの性質を詳しく調べる。建設費は約7700億円で、日本が半分を負担するとされる。

 こうした大型計画は、文部科学省が3年ごとにロードマップとしてまとめ、予算化を検討する。KEKは今年2月、ILCをロードマップに申請したものの、「もっと強力な組織を作るべきだとの提案が国際将来加速器委員会からあった」として3月に申請を取り下げた。引き続き誘致をめざすとしているが、取り下げによって議論が進むことは当面なくなった。


この新聞社だけでなく、報道した他のテレビも含めたメディアはこういうトーンで発信していました。

鬼の首を取ったごときに実現遠のくが強調されています。

果たして本当に遠のいたのでしょうか!?今回の報道には背後にどういう経過があったのかの解説が抜け落ちていて極めて不十分と私は思います。

🚩ポイント1
なぜ今頃になってKEKが取り下げたことが明らかになってニュースになったのか。
ーーー文科省のロードマップのパブリックコメントに入る時期間近になり、取り下げた事実を事前に発表したに過ぎません。

🚩ポイント2
なぜKEKは取り下げたのか。
ーーー記事にもあるように国際将来加速器委員会(ICFA)からもっと強力な組織をつくるべきだとの提案があった。すなわちILCは国際プロジェクトですから日本国内の議論を中心に組み立てるのではなく国際連携の姿を明らかにした上で事を進めた方が合理的との判断をKEKがしたのでしょう。取り下げる前の申請書にはその点は不確実な状態でした。事実、他紙では状況が変化したので実態と合わなくなったことを取り下げた理由としています。ロードマップに頼らず別次元で挑戦をするという情報もあり、決してあきらめた訳ではありません。

🚩ポイント3
状況の変化とは事実あったのか?
ーーーありました。欧州戦略会議にて決定した重要事項にILC のプレラボを準備するIDT という国際組織をKEK内に発足しました。詳しくは私の8月7日の記事を参照して下さい。

🚩ポイント4
ロードマップは完全なる必要絶対条件か?
ーーー文科省のロードマップは国内の予算を組む上で必要な手続きです。しかし、これほどまで国際協調の中身が進捗している中でロードマップ手続きに固執するほど絶対条件と言える状況なのでしょうか。取り下げ=議論が進むことは当面なくなったという表現は手続きのみで判断した記事と思います。私はIDTが発足したことにより議論は活発化して政府への働きかけ圧力はむしろ高まると確信しています。ロードマップは文科省内の予算枠組を決めるための手続きに過ぎませんから必要絶対条件にはすでになっていない可能性が強いと見ます。なぜならILC は国際プロジェクトだからです。そして事実、国際協調は整備され一歩一歩確実に進んでいるのです。

以上、私が知り得る根拠により決して遠のいたとは思いません。

文科省の諮問機関である有識者会議で以前に大型プロジェクトにILCが含めまれない理由に国際連携について不透明という理由が付されていました。その連携協調が明確になった今、国内議論だけでは収まらない状況になっているということです。

今回の件については本県のILC推進局のメディアへの解説不足もあったのではないかと推察します。米国や欧州がいかにILCに期待しているかも含めて刻々と変化する情勢を的確かつ定期的にメディアに発信して欲しい旨を先日当局に私から申し入れをしました。
posted by 飯沢ただし at 23:27| 岩手 ☁| Comment(0) | ILC 【東北から世界に発信!】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする