2020年06月19日

欧州素粒子物理戦略の更新と公表

本来は5月末に行われる予定だった欧州素粒子戦略の更新を決定する会議(CERN理事会)が開催され、戦略の更新が決定し、本日その結果が公表されました。

その中でILC(国際リニアコライダー)については、「欧州戦略に適合するものであり、日本がタイムリーに進めば、欧州はILCに協力する」と評価されました。

ilc2_bigx.jpg


以下関連す部分を添付します。

欧州素粒子物理戦略アップデートにおけるILC関連部分 (3.a)

○研究者コミュニティによる日本語仮訳

3.優先度の高い将来の取り組み
a) 電子陽電子ヒッグスファクトリーが、最も優先度の高い次のコライダーである。長期的には、達成可能な最高エネルギーで陽子‐陽子衝突型加速器を運転するという野心を欧州の素粒子物理学コミュニティは、持っている。これらの説得力のある目標を達成するには、新機軸と最先端テクノロジーが必要になる。
● 素粒子物理学コミュニティは、高度な加速器技術に焦点を当てた研究開発の取り組み、特に高温超電導体を含む高磁場超電導磁石のための取り組みを強化する必要がある。
● 欧州は、その国際パートナーと共に、少なくとも100TeV の重心エネルギーを持つCERN の将来ハドロンコライダーの技術的および財政的実現可能性を調査するべきである。そのコライダーは第一段階として電子陽電子ヒッグス・電弱ファクトリーとなる可能性を持つ。そのコライダー、および関連するインフラストラクチャの実現可能性調査は、グローバルな取り組みとして確立され、次の戦略更新のタイムスケールで完了されるべきである。
日本における電子陽電子国際リニアコライダー(ILC)のタイムリーな実現は、この戦略に適合するものであり、その場合、欧州の素粒子物理学コミュニティは協働することを望む。

○英文
3. High-priority future initiatives

a) An electron-positron Higgs factory is the highest-priority next collider. For the longer term,the European particle physics community has the ambition to operate a proton-proton collider at thehighest achievable energy. Accomplishing these compelling goals will require innovation and
cutting-edge technology:
• the particle physics community should ramp up its R&D effort focused on advanced acceleratortechnologies, in particular that for high-field superconducting magnets, includinghigh-temperature superconductors;
• Europe, together with its international partners, should investigate the technical and financialfeasibility of a future hadron collider at CERN with a centre-of-mass energy of at least 100 TeVand with an electron-positron Higgs and electroweak factory as a possible first stage. Such a feasibility study of the colliders and related infrastructure should be established as a global endeavour and be completed on the timescale of the next Strategy update.

The timely realisation of the electron-positron International Linear Collider (ILC) in Japan wouldbe compatible with this strategy and, in that case, the European particle physics community would wish to collaborate.


今回のポイント

● ヒッグス・ファクトリーが最優先であると明記。
➣ ILC 計画が名指しされている。
➣ ヒッグス・ファクトリーは何があっても絶対実現させる。(CERN 主導の場合も調査検討)
● ILC は欧州戦略に適合するものであり、日本がタイムリーに進めば、欧州はILC に協力する。
● これで日本・米国・欧州が揃った。



ヒッグス・ファクトリー(ヒッグス粒子の探求)は継続することの決意と、それを実現するためにILCは不可欠な存在と言っていると理解しました。欧州のお墨付きを頂き世界全体でILCを後押しすることになりました。あとは日本政府の時宜を外さない決定だけです。

本県は主要施設が集中する位置にあることから、国の決定をひたすら待つだけでなく前々と戦略的な準備をし、情報発信することが求められると考えます。

posted by 飯沢ただし at 23:14| 岩手 ☁| Comment(0) | ILC 【東北から世界に発信!】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする