
昭和41年、円谷英二氏が監修した空想特撮シリーズ『ウルトラQ』の第19話がこれである。この回に出現するケムール星人は「Qシリーズ」の中でも特異で、最も印象に残る宇宙人である。
「2020年の挑戦」は神田博士が書いた小説となっていたが、実は神田博士とケムール星人との交信の記録だったという。発達した医療により高度な知能と長寿を得た健全な肉体の維持には限界のあるケムール人は、2020年という未来の時間を持つ星へと送られた人間の身体を使って肉体の衰えを補おうと企んでいた。
ここで設定された2020年という未来は1960年代からみて科学の進歩が顕著になっていることを期待されていると思うが、実際に2020年に到達した今、果たしてどれほど人類の期待に応えられた発展をみているだろうか。
スペイン風邪以来の世界的パンデミックに陥っている今、ケムール人が高度な知能と長寿を得たが健全な肉体の維持に限界があるとは奇しくも54年前に人類の前に立ちはだかる壁や限界が暗示されていたような気がした。
人類の歴史は感染症との闘いの連続であり、新型コロナウイルスを克服したとしてもまた新たなウイルスが出現することは間違いない。科学の基礎研究が継続的に不可欠なのはここに意味がある。題名のとおり挑戦し続けていくしかない。