丸紅、石炭火力の開発撤退 再生エネにシフト
【2018/9/16 1:00 日本経済新聞 電子版】
丸紅は石炭火力発電所の新規開発から撤退する。すでに保有する石炭火力発電所の権益も2030年までに半減させる。丸紅は二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力事業の比率を減らし、成長分野である再生可能エネルギーの開発に人材や資金をシフトする。環境配慮などを企業に求める「ESG投資」の広がりを受け、世界で脱石炭の動きが加速する。
丸紅は出資比率に応じた出力で世界に計300万キロワット分の石炭火力発電の持ち分を保有する。原子力発電所3基分に相当する規模だが、この持ち分を30年までに資産の入れ替えなどで半分に減らす。国内外で参画している十数件の石炭火力事業のうち、すでに数件で売却交渉に入った。
さらに石炭火力向けの新規開発は原則として行わない。人材や資金を太陽光発電など再生エネにシフトし、発電出力に占める再生エネの比率を足元の1割から23年までに2割に伸ばす。
丸紅は世界で計1200万キロワット分の発電所の持ち分を保有している。日本の総合商社は安定収益源として世界で電力事業を進めているが、丸紅は最大規模。出力の合計は中国電力より大きい。
世界の機関投資家は環境負荷の高い企業の株式を買わないESG投資にカジを切っている。アイルランド政府系ファンドが化石燃料企業に関連する資産を5年以内に売却するなど、石炭火力発電の比率が高い企業は市場の圧力にさらされる。
欧米の発電大手は脱石炭火力で先行する。仏エンジーは15年、新規で石炭火力発電所を開発しないと発表。スペインのイベルドローラも25年までに撤退するとしている。
国内でも東京ガスと九州電力が千葉県袖ケ浦市で進めてきた発電所の建設計画を石炭による火力から液化天然ガス(LNG)を使った火力発電所に変更する方針。旭化成も宮崎県の自社工場向けに電気を供給してきた石炭火力発電所を、天然ガスの火力発電所として更新する。
わが国は原子力発電所が停止中で、先の北海道で発生した地震では歪な火力発電所依存が明らかとなった。商社が脱石炭に舵を切れば自ずと示される道はLNGか再生エネということになる。いよいよ電源のエネルギー革命は加速してきた。供給面だけでなく需要側も変革に備えなければならない。脱炭素や節エネに関して国民の意識づけを学校教育の場や社会教育の場でもっと徹底すべきではないか。