次世代加速器、誘致に壁
宇宙誕生の謎に迫る 5000億円どう捻出、見合う成果難しく
(2018/7/30付 日本経済新聞)
宇宙誕生の謎に迫る次世代巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を国内に誘致する構想の雲行きが怪しくなってきた。日本学術会議が議論を本格化し、それを基に文部科学省が年内に誘致に名乗りをあげるかどうかの結論を下す。ただ厳しい財政状況の政府は容易にゴーサインを出せない。実現には「2つの壁」が立ちはだかり予断を許さない状況だ。
ILCは地下のトンネル内で電子と陽電子を光速で飛ばしてぶつけ、138億年前のビッグバンに近い高エネルギー状態をつくる。万物に質量を与えるヒッグス粒子を生み、崩壊する様子を詳しく調べることで、物質や宇宙の起源を探る。
日米欧が共同で建設を目指しているが、現時点では日本だけが建設地に名乗りを上げようとしている。もし日本で実現すれば岩手県内が有力。誘致した場合は、海外から多くの研究者の来日が見込める一方、他国より負担金額が増える。建設費約5千億円をどうまかなうかが最大の課題だ。
誘致構想の表明は年内が期限とされる。欧州は2019年から素粒子研究の中長期プロジェクト計画を見直すため、越年すれば時間切れとなり、この計画に載らない。欧州が加わらなければILCの建設は進まない。
学術会議の山極寿一会長(京都大学学長)は26日記者会見し、ILCの国内誘致に関して審議を開始することを明らかにした。ノーベル物理学賞受賞の梶田隆章東京大学教授ら専門家で構成する委員会を設置し、期待される科学的成果などについて精査する。
山極会長は「科学研究の位置づけについて早急に審議する」と説明。ILC計画を推進する研究グループが求める「年内の結論提示」には間に合わせるとみられる。専門家会合は8月10日に1回目の会合を開く予定だ。
学術会議は、誘致について13年に「時期尚早」とする報告書をまとめている。その後、文科省は有識者会議を設置してILCの妥当性について議論を進めてきた。ILCを推進するグループも装置の直線距離を当初計画の30キロメートルから20キロメートルに短縮し、建設費を3千億円ほど圧縮して5千億円台に見積もるなど、実現可能性を示した。
文科省の有識者会議は7月にまとめた報告書で誘致について結論を出さなかった。これを受け、科学コミュニティーの代表である学術会議に誘致の妥当性を改めて審議するよう依頼。学術会議で科学的成果の妥当性や優先順位を議論してもらい、その結果を尊重して政策判断をするという通例の手続きになる。
問題は予算だ。仮に学術会議が誘致にゴーサインを出した場合も、日本の既存の科学技術予算の枠内では建設費などの負担金を捻出できない問題がある。他の科学技術プロジェクトにしわ寄せが行くのは確実だ。
実現可能性は不明だが、震災復興予算を活用する案などもくすぶる。別枠での予算確保を含めて様々な思惑が交錯しており、一部の議員からも既存の枠組みにとらわれない予算対応の必要性を訴える声が出ている。
超党派の「リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟」で会長を務める河村建夫元文科相は「科学技術予算にしわ寄せがいかないようにしないといけない」と話し、塩谷立元文科相も「別枠で考えていく必要がある」と指摘する。東京大学の山下了特任教授は「複数省庁にまたがってプロジェクトを実現してほしい」と省庁横断の対応が重要との考えを示す。
もう一つの壁は、科学的な意義を問う声が根強く残る点だ。
ILCの活用で最も期待されるのはヒッグス粒子の精密観測だが、装置をコンパクトにして得られる成果は限られてしまい、新粒子発見など研究者の誰もがノーベル賞に値すると太鼓判を押せるだけの成果が出る可能性は極めて低いというのが関係者の見方だ。
最初に直線20キロメートルで作った場合も、後から延長することは容易との説明があるが「予算規模に見合った科学的成果は期待できない」(文科省幹部)との指摘がある。
元学術会議会長の黒川清・東京大学名誉教授は「資金面で(日本の負担が)期待されているだけで、装置を使いこなすことはできない」と誘致に厳しい意見だ。
大型実験装置の建設には莫大な費用がかかる。各国は財政難から巨大科学への投資に慎重で、国際協力の形を取らざるを得ない。日本がILCを誘致すればプロジェクトの主導権を握れるが、科学技術の予算は限られる。
科学的な意義と費用対効果をてんびんにかけ、どう最終的な結論を導き出すのか。科学者コミュニティーによる主体的な関与も重要になる。
かなり反対派の研究者に偏った意見を記事にしたようです。20キロにしたステージングは研究者によって機関決定されたことです。「見合う成果難しく」という副題にはちょっと違和感を禁じえません。記事に書いてある装置を使いこなすことができない日本の研究者なんて逆に存在するのでしょうか???よく取材して書いて欲しいものですな。
それでもこうして具体的にお金の話がメディアから出てきたといういことは課題が絞られてきたとも言えるでしょう。
2018年07月30日
他場も着々と
岩手競馬振興連盟で高知競馬を、岩手県競馬組合議会で兵庫県園田競馬場を視察しました。
JRAのIPATやSPAT4(南関東競馬場の電話投票システム)の地方競馬へのシステム解放により瀕死に喘いでいた地方競馬は一気に息を吹き返しました。その模範例が高知競馬と園田競馬という理由で視察対象となりました。
高知競馬は一時は88億円もの累積赤字を計上し、存廃の窮地に追い込まれましたが起死回生を狙い通年ナイター興行を断行しました。ネット販売環境に最も適した競馬場になったことで今では売り上げの90%はネットによるものとなっています。売り上げが急速に増加している近年でも累積債務の返還よりも既存施設の再投資や新たなファン獲得のためのサービス向上に利益が充てられています。ニッチなサービス提供が特徴的で女性専門ルームの創設は画期的です。
兵庫県競馬は赤字になったのは2期のみで累積赤字はないものの、岩手と同様に2場体制(園田と姫路)を取っており、なおかつ西脇トレセンを保有しているため経費高になっているのは否めません。ネット販売依存率は75%。近年の利益が出た分はやはり園田競馬場、姫路競馬場の再投資に優先的に向けられています。内装をリニューアルしただけでなく御座敷ルームやグループ用のルームのスペースを作り場内ファンサービスにも力を入れていて、以前に訪問した時の園田競馬場とは見違えるほどきれいになっていました。
高知、園田ともキャッシュレス販売に力を入れており、人件費削減の効果を狙っています。
ネット販売解禁による売り上げ増がどこまで続くかどこの主催者も見通せない中も着々と手を打ってきていることが窺い知れました。
岩手県競馬組合に対して「現場に必要な個所にお金が回っていない!」としつこく意見を競馬議会で述べてきて最近ようやくその方向性が出てきましたが、まだまだ工夫が必要なことがよくわかりました。中長期的な戦略経営をしていくためには単年度の存廃ルール見直しも検討すべき時期にきていると感じました。
JRAのIPATやSPAT4(南関東競馬場の電話投票システム)の地方競馬へのシステム解放により瀕死に喘いでいた地方競馬は一気に息を吹き返しました。その模範例が高知競馬と園田競馬という理由で視察対象となりました。
高知競馬は一時は88億円もの累積赤字を計上し、存廃の窮地に追い込まれましたが起死回生を狙い通年ナイター興行を断行しました。ネット販売環境に最も適した競馬場になったことで今では売り上げの90%はネットによるものとなっています。売り上げが急速に増加している近年でも累積債務の返還よりも既存施設の再投資や新たなファン獲得のためのサービス向上に利益が充てられています。ニッチなサービス提供が特徴的で女性専門ルームの創設は画期的です。
兵庫県競馬は赤字になったのは2期のみで累積赤字はないものの、岩手と同様に2場体制(園田と姫路)を取っており、なおかつ西脇トレセンを保有しているため経費高になっているのは否めません。ネット販売依存率は75%。近年の利益が出た分はやはり園田競馬場、姫路競馬場の再投資に優先的に向けられています。内装をリニューアルしただけでなく御座敷ルームやグループ用のルームのスペースを作り場内ファンサービスにも力を入れていて、以前に訪問した時の園田競馬場とは見違えるほどきれいになっていました。
高知、園田ともキャッシュレス販売に力を入れており、人件費削減の効果を狙っています。
ネット販売解禁による売り上げ増がどこまで続くかどこの主催者も見通せない中も着々と手を打ってきていることが窺い知れました。
岩手県競馬組合に対して「現場に必要な個所にお金が回っていない!」としつこく意見を競馬議会で述べてきて最近ようやくその方向性が出てきましたが、まだまだ工夫が必要なことがよくわかりました。中長期的な戦略経営をしていくためには単年度の存廃ルール見直しも検討すべき時期にきていると感じました。